幸せになろう、なんて思いもしなかった。
自分はダメな人間だと卑下してきた。
自分が幸せになるくらいなら、
その分誰かが幸せになればいいと思っていた。
だから、僕はのらりくらりと
人にかかわりすぎないように生きてきた。
幸せになろうなんて、思うこともなかった。
僕はこのままなんとなく、生きていけばいいのだと。
もしくは死んでしまってもいいのだと。
最大の誤算は人を好きになってしまったこと。
なるべく関わらないよう生きてきたのに。
そして、受け入れられてしまったこと。
喜怒哀楽のすべてが欠けていたはずなのに、
喜楽は手に入ってしまった。
どうすればいいのだろう。
死にたかったはずなのに。
死ねなくなってしまった。
幸せを感じるが、それが怖い。
いつか彼女を不幸にするのではないかと。
それならいっそ嫌われたい。
自分勝手でどうしようもない考えが浮かぶ。
でも嫌われ方すらわからない。
ただ、僕は幸せにできる自信がないだけなんだろう。
幸せとは何かがわからないから。